第157回北海道歯科技工学術研修会

日時 / 2019・8・24(土)   受付12:30/開会13:00~17:30

会場/北広島市芸術文化ホール 北広島市中央6丁目2番地1  TEL:(011)372-7667

 

講 演Ⅰ 「CAD/CAMシステムと使用材料について」 (13:15~15:15)

株式会社札幌デンタル・ラボラトリー       垂水 良悦【略歴】

歯学博士

日本歯科技工士会 認定講師

日本歯科技工学会 専門歯科技工士

日本歯科理工学会 Dental Materials Senior Adviser

【抄録】

当社では歯科用CAD/CAMシステムの黎明期から活用と検証を行っているが、2014年のCAD/CAM冠の保険収載により歯科界での普及は格段に広がり、加工機や材料などもこれまでの歯科メーカー以外の参入も多くなった。

デジタル化により技工作業の標準化が図りやすくなった反面、これまでとは違ったエラーへの対処が必要となり、それまでのクローズシステムではメーカーに依存していた材料特性へ考慮は、オープンシステムでは設計者に委ねられている。従来も印象材、石膏、埋没材、ポーセレンなどもそれぞれ物性の違いがあることを考慮して技工作業をしてきたと同様に、デジタルでもスキャナー、デザインソフト、使用材料、加工機についても知っておかなければいけない。

今回、当社で経験してきたデジタルデータ固有のエラーとその対処法や、Dental Materials Senior Adviserとして加工や設計時に知っていてほしい材料知識などを伝える。

 

講 演 Ⅱ 「デジタル化への流れで見えてくるもの」 (15:25~17:25)

北海道大学 大学院歯学研究院 口腔機能学分野 冠橋義歯補綴学教室 准教授 上田 康夫

【略歴】

昭和63年 3月 北海道大学歯学部卒

平成 4年 3月 北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了

学位:歯学博士 取得

平成 4年 6月 北海道大学歯学部附属病院第二補綴科 医員

平成 4年 8月 北海道大学歯学部歯科補綴学第二講座 助手

平成 9年10月 北海道大学歯学部歯科補綴学第二講座 講師

平成11年 4月 北海道大学大学院歯学研究科 講師

平成28年 2月 北海道大学大学院歯学研究院 准教授

 

日本補綴歯科学会   指導医,専門医,代議員

日本顎顔面補綴学会  認定医,代議員

日本生体医工学会   会員

日本デジタル歯科学会 会員

文献】

1)デジタル改革の実践 〜改革を加速する3つのドライバー〜.IBM Institute for Business Value ,調査レポート,2017.

【プロフィール】

大学人としては,コンピュータを活用したシステムと利用者である人間とのインターフェースのあり方について最も関心を持っている。歯科医師としては,先端技術医療をいかに目の前にいる患者さんに素早くかつリーズナブルなコストで提供できるかに関心がある。

今までに関わってきた大きなテーマやプロジェクトとしては、国内初の歯科用CAD/CAMシステム「GN-I」の開発に参画し、主に初期のCADの開発を主導した。国内初の光造形装置(3Dプリンター)「SOUP」システムの第2号機を北大歯学部へ導入する事となり、その運用立ち上げに参画し、それ以後、北大病院生体技工部で3Dプリンターを活用した三次元生体実態模型を製作するようになるまで20年以上に渡り、院内の手術シミュレーション用模型を一手に作り続けてきた。などがあります。

また、数年前からはジルコニアをダイレクトでプリントできる工程の実現に向けて力を注いでいる。

【抄録】

2014年にハイブリッドレジンを切削加工で製作する「CAD/CAM冠」が保険収載されたのを機に我が国の歯科技工のワークフローはデジタル化の方向に大きく流れを変えました。さらにここ数年での口腔内スキャナーの台頭で歯科診療のワークフローにもデジタル化の波が訪れようとしています。

演者は大学院生時代に大学/医局の1年先輩である北海道医療大学 疋田一洋教授と共に、北海道大学 故 内山洋一名誉教授のもとで国内初の歯科用CAD/CAMシステム「GN-I」の開発に参画しました。また、ほぼ同時にいまでは「3Dプリンター」と称されるようになった技術の黎明期からその業界に関わり、その分野の専門家と活動を共にしてきました。当時はいくら私が力説しても「3Dプリンター」の医療分野でのニーズは市場調査から見えてこないと言われたものでした。

しかし、その当時、学会員として参加していた情報処理学会や精密工学会で新たな夢として語られていた最先端技術が、いまや、みなさんがお持ちのスマートフォンやデジタルカメラ、ご自宅の薄型テレビなどに組み込まれ、ほとんどの人がその技術を意識しないままにその恩恵を享受する時代となりました。20〜30年程度のスパンで見ると、新たな技術が当たり前の技術として浸透する様子が見えてくるように思います。

デジタル化の波は、今まさに歯科業界に押し寄せようとしているように見えますが、実はこれは我々の業界だけではなく、社会全体に波及しようとしている大きな流れの一部にしか過ぎません。

IBMは、「デジタル改革の実践 〜改革を加速する3つのドライバー〜」と題するレポートの冒頭で、「デジタル化の流れは、かつてないほどの破壊力を持って業界を再編し、あらゆる伝統的な業態を根本から変質させつつある。この破壊的な環境下で勝ち残っていくために、企業は、より価値の高い顧客経験の実現を推進していかなければならない」と述べています1).それでは、我々の業界では今後何が変わってどのような方向に行くのか、材料と技術の面から私自身の臨床経験も交えて、思うところを述べさせていただきたいと思います。