第60回北海道歯科技工学術大会報告

 理事 濱本 範俊

 さる10月3日(土)北見芸術文化ホール[北見市]で第60回北海道歯科技工学術大会が開催され、有限会社デンタルセラミックアート 鎌田英樹先生より『History of my ceramic Ⅱ』、秋田大学医学部付属病院歯科口腔外科 田中清志先生より『顔面補綴(エピテーゼ)』のご講演をいただきました。また、会員研究発表では、足立俊哉氏より『基本概念に基づいたRPDによる補綴設計の提案』、垂水良悦氏より『CAD/CAM導入と有効活用のための判断基準』を発表していただきました。

 鎌田英樹先生からは、これまで使用された陶材の変、減圧陶材築盛法、デジタル機器、CAD/CAMに対するお考えなどをご講演いただきました。

 1960年代のセラミック操作は、人工歯を削合したポストクラウンやシェル状にした陶歯を頬側及び唇面に貼り付けるロングピン、リバースピン、デビスクラウン、チューブ陶歯などのピンテクニックでした。

 1970年代には、アルミナスポーセレンジャケットクラウン、プレシャスメタル等の焼付用金属を用いたメタルボンドが、陶歯前装鋳造冠や陶歯前装継続歯に替わって取り入れられる様になりました。その後、インセラム等の発売によりオールセラミックスブリッジなどが可能となり、プレスセラミックスなども広く普及しました。

 昨年4月からは健康保険にCAD/CAM冠が導入され、CAD/CAM装置を使用して製作される補綴物が、以前に比べ普及したように感じます。しかし、CAD/CAM装置を使用して製作される補綴物に比べ、私たち歯科技工士によって手作業で作られた補綴物の方が、高く評価される様な仕事をしなければならないと感じました。

 田中清志先生からは、秋田大学医学部付属病院歯科口腔外科で製作している、顔面補綴(エピテーゼ)や、その他の症例をご紹介頂きながら、制作方法などをご講演いただきました。

 顔面エピテーゼは、顎顔面領域に用いる補綴装置の事で、腫瘍、火傷、怪我、先天性などによる、顔面部の欠損補綴を目的としており、形成外科、口腔外科などで治療および研究開発が行われています。

 顔面エピテーゼには、鼻エピテーゼ、耳エピテーゼなどがあり、製作は義肢装具士、歯科技工士が行うことが一般的です。日本での顔面エピテーゼ治療は、医療行為として認められておらず、装身具扱いとなり保険対象外となってしまいます。その影響もあり、欧米に比べ症例数が少なく、認知度も低い状態でした。しかし、広島大学歯学部口腔保健学科で、歯科技工士の養成課程で顔面エピテーゼのカリキュラムが導入されてからは、少しづつではあるが認知度も高まってきており、法の整備が求められてきています。

 歯科技工士にとって、顔面エピテーゼを製作できることが、手探り経営から脱出する方法になるとともに、歯科医療ならではの新しい価値創造になるかもしれないと感じました。

 最後にこの度の研修会に於いてご尽力いただいた講師の諸先生、各地域歯科技工士会の会長様、そしてご参加頂いた皆様に深く感謝申し上げます。